3. 最近の実験モード解析技術とODS
前述のKlostrmanとLemonによるBBAの論文が発表された頃、(1969年後半)は、J.W.ColeyとJ.W.TukeyによるFFTアルゴリズムの論文(1965年)が発表されて間もない頃であった。伝達関数の計測には、さきにFig.1-4、1-5に示されたSD社の“自動機械インピーダンス伝達関数解析装置”が広範に使われていた。
この装置では、実験対象物を“電気機械式”または、“電気油圧式”の加振器を用いて掃引正弦波で加振しながら瞬時の“加振点加振力”と“応答点加速度、または速度、変位”を同時に計測したアナログ信号をフィルタに通してlog(対数)表示で記録し、伝達関数を計算していた。
しかし、往時の掃引正弦波による加振法と計測信号のアナログ表示は、その後のFFTアルゴリズムの進歩、エレクトロニクスの進歩、コンピュータの進歩と普及、などによってすっかり消滅している。
現在、実験モード解析の技術は格段に進歩している。一例として、デジタル信号を用いた“種々のブロードバンド・ランダム加振法”や“swept-sine波とtransient signalによる加振法”が1回の加振で多くの周波数成分が同時に加振できる加振方法として使われている。また、加振力と応答のスペクトルを同時に計算する種々の方法が開発されている。
しかし、今でも最も一般的な加振方法はインパクト加振法である。“迅速かつ安価な加振実験”のためには、通常、“1本のインパルスハンマ”と“1個の加速度ピックアップ”、“1台の2チャンネルFFTアナライザ”に加えてデータの後処理のためのソフトウェアがあれば、充分である。
最近、
・ 安価なトランスデューサー
・ PCによるデータ取り込みシステム
・ ポータブルデータレコーダ
・ PCベースのデータ取り込みシステム
・ ポータブルデータコレクター
・ デスクトップ&ノートタイプコンピュータ
そして、
“パワフルなソフトウェアの進歩”
によって、実験モード解析は、一層多くの実務者の手に行き渡るようになってきている。
実験モード解析はこれまでほとんどが静止している試験対象についての加振実験から“固有振動数”と“モード形状”を同定する解析方法に限られてきた。
しかし、新しいモード解析として、運転中の機械または装置のODS
(Operating Deflection Shape)を直接測定する手法が試みられている。ODSからは、運転時の機械や部品の変形に加えて全系の振動挙動についての絶対的な動的挙動の理解に役立つ情報が得られる利点がある。
これらの手法については、以下の文献を参照されたい。
参考文献
M.H.Richardson. Is it a Mode Shape , or an Operating
Deflection Shape? . Sound&Vibration, Jan,1997
H.Vold. Display Operating Deflection Shapes from Nonsteady
Data. Sound&Vibration, June,2000