実験モード解析における部分構造合成法の、最初の論文といわれる
“Building Block Approach to Structural Dynamics” は、1969年にASME(アメリカ機械学会)Paperとして、シンシナティ大学のA.L.KlostmanとJ.R.Lemonによって発表された。
この論文の著者たちは、複雑な構造物または機械について、ある構成部品(コンポーネント)を単独に変更した場合の、全系の動的挙動に与える影響を実験から得たデータを用いて解析的に予測する手法として以下の提案をしている。
論文では、この手法の理論的背景と計算手順について述べ、家庭用の電気洗濯機に適用した例を紹介している。
この手法では、
1) はじめにFig.1-1に示すようなn個のコンポーネントからなる全系を、個々のコンポーネントに分解し、
2) 個々のコンポーネント n について加振実験から、節点
j に加振力 fj(t)を加えた際の、節点 i における応答 xj(t)を測定し、
両者のフーリエ成分Fj(ω)とXi(ω)を求める。ここでωを省略して、コンプライアンス伝達関数を(1-1)のように定義する。
Fig.1-1の系は3個のコンポーネント#1、#2、#3からなり、コンポーネント#1は4個の節点1、2、3、4 を持っているので、加振力F1と変位Xについて(1-2)を得る。
コンポーネント#2では一端が固定されているので、(1-3)のように書ける。
コンポーネント#3は、コンポーネント#1と2点で結合されているので、(1-4)を得る。
ここで、他の加振力が0で、加振力F1だけが加えられたとき、7個の未知数X1、X2、X3、X4、F1、F2、F3とF1との間の関係は、(1-5)で与えられ、
左辺のコンプライアンスマトリックス
の逆行列から7個の未知数が計算できる。
F2、F3、F4についても同様の手順で線形系と仮定できれば、全系についての計算が可能である。
ここで、全系の中で、あるコンポーネント♯nを変更した場合の全系への影響は、(1-5)における
のコンポーネントをこの変更に応じて書き直して、上述の計算を行うことによって予測することができることがわかる。
KlostermanとLemonは、この手法の妥当性を実証するために、Fig.1-2に示した電気洗濯機(Automatic
washing machine)について、Fig.1-3に示した洗濯槽の支持部分の伝達関数をFig.1-4に示した“自動機械インピーダンス伝達関数解析装置“を用いて伝達関数を測定した。
この解析装置では、正弦波の加振力の周波数を低周波から高周波にゆっくり掃引したswept-sine波の励振力が用いられ、加振点加振力と応答点加速度(または速度や変位)を同時に計測して伝達関数を計算ている。
Fig.1-5に加振実験のブロック線図を示す。
Fig.1-6、1-7、1-8に上述の支持部分における伝達関数の実験結果と計算結果を示す。
今日、部分構造合成法では、複雑な系を複数の部分構造(コンポーネント)に分けて、各部分構造にもっとも適した手法でFEM、または理論式を用いて解析的に、あるいは加振実験によって伝達関数を求めて全系の伝達関数をもっとも効率のよい手法で作成している。このような指針はBBAに負うところが多い。
BBAはこの論文のあとで、電動モータにおけるロータのケーシングの振動、トラックの車体とシャーシの連成振動などの解析に用いられ、そのほか、多くの論文が発表されている。
参考文献
A.L.Klosterman、J.R.Lemon Building Block Approach to Structural
Dynamics March 30-April 2-1969- ASME.Vibration Conference