はじめに1 234

2.モード座標系の威力 (モード座標系と物理座標系)
    Fig.2-1における横荷重を受ける高層ビルの強制振動の運動方程式は、物理座標系を用いたマトリックス形式で(2-1)のように書ける。
 Fig.2-1 Building displacement represented by normal modes.
 


 
 
 

Fig.2-1の12階建てのビルの場合、系は、12自由度で質量マトリックス:M 、減衰マトリックス:C、剛性マトリックス:K は、それぞれに(12×12)の大きさを、強制力F、加速度 、速度、変位X の各マトリックスは(12×1)の大きさを持ち、系は12個の固有値、ωr 、r=1〜12と12個の個有値ベクトルΦr(xi)、r =1〜12、i =1〜12を持つ。

ここで固有値ベクトルを(2-2)のように並べた物がモードマトリックス(Modal Matrix)上である。


 


 

ここで、励振力が低周波域に集中している場合には、高周波の振動は励振されないので低次の周波数のモードΦ1(xi)、Φ2(xi)、Φ3(xi)だけが励振されると仮定できる。 また、i番目の変位xiはこれらの和として(2-3)で表され、
 


 
 


 
 

(2-2)を用いると(2-4)から(2-5)を得る。
 


 

ここで(2-5)を(2-1)に代入し P の転置マトリックスPTをマトリックス M C K に前から掛けると(2-6)を得る。
 


 

ここで、PTM Pから1,2,3次の振動モードに対応する3個のモード質量
 


 
 

が得られる。

同様にPTCPPTKPから3個のモード減衰係数と3個のモード剛性k1,2,3が求められ、(2-6)は、Fig.2-1に示されたΦ1 (x)Φ2 (x)Φ3 (x)の3個の振動モードに対応した1自由度系の強制振動の式になる。
 

すなわち、物理座標系では12自由度の振動系が、モード座標系Φでは3自由度系に縮小されることに気づく。
この方法は、モード合成法(Mode Summation Method)として知られている解法で、複雑な構造物、一例として50階建てのビルにも適用できる。
 
実験モード解析から ωγΦγ(x) x=1,2・・・n が正確に同定出来れば、(2-5)、(2-6)を用いて、複雑な系の振動がごく簡単に計算できる。これがモード座標系の威力である。
 
追補:
(1) PTMPPTKPは通常対角マトリックスであるが、PTCPは対角にならないので、(2-6)は、連成項を持つ、この場合の解析については下記参考文献を参照されたい。
(2) Cが比例減衰:C=αM+βKとおける場合の解析も同文献を参照されたい。
 
参考文献:
(1) W.T.Thomson
Theory of Vibration with Applications: 2nd Edition Prentice Hall. 1981
(2) 長松 昭男
モード解析入門 コロナ社 1994

はじめに1 234