「ホーホケキョッ!」。番組製作会社から、ウグイスの鳴き声を分析して欲しいという依頼が来た。本物のウグイスの鳴き声と、人間が真似るそれとを比較するというテーマである。
私は、機械から発生する音の研究をしているが、鳥の鳴き声というのは初めてだ。面白そうだと思い、いざ分析へと研究が始まった。
ウグイスの鳴き真似をするのは、動物声模写でおなじみの江戸屋子猫さんと、素人の学生である。
実験は、私たちの研究室で行った。うぐいすの鳴き声と子猫さんの鳴き真似は、MDに録音されており、その音を直接解析ソフトに入力してデータを出力した。また、学生の鳴き真似はマイクで測定し出力した。
分析結果(左図)を見ると、子猫さんの波形が本物とそっくりなことに驚いた。「ホー」のところは、倍音成分である高調波もしっかりと発声されている。また、「ホ・ケ・キョッ」は短時間に発声される3つの高い音であり、この音を出すのは普通困難であるが、子猫さんははっきりと出している。
データを見ただけで(もちろん聞けば分かることだが)、プロとアマの差は一目瞭然。プロの力を見せつけられた。
今までは耳を澄まして聞いていただけのうぐいすの鳴き声だが、分析することによって、全く違った見方で知ることができた。周波数成分や、時間成分、音の大きさなど、さまざまな情報が分かってくる。
これからは、鳥の鳴き声を素直に聞けなくなりそうだ。機械的に細かく分析する条件反射のような神経がつい働いてしまう。スズメでもカラスでも、身近で鳥の鳴き声を聞くと、頭の中で分析結果の予想を考えてしまう時がある。
しかし、将来技術者を目指している私にとっては、それで構わないと思う。技術者にとって、どんなことに対しても、さらに奥深く見ようとする「好奇心」・「洞察力」は重要だ。
今回の仕事に携わったことで、風に吹かれて運ばれるタンポポの種のように、私の身に自然と技術者としての能力の種が運ばれてきたのかもしれない。このような環境がある今の研究室を誇りに思う。そしてその種を、いつか必ず、開花させてみせようと思う。
風早 聡志
Satoshi
Kazahaya
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