等価伝達関数(ETF)を用いたリライアブル制御

研究背景

今までは、機械が故障すると暴走する危険があるので、緊急停止措置が取られてきました。 しかし、機械を緊急停止させると不都合な場合があります。例えば、工場の製品搬送システムやエレベータ、 将来普及が予想される介護ロボットをはじめとしたサービスロボットがこれにあたります。

介護ロボットを例にとって見ましょう。緊急停止アルゴリズムによってロボットに供給される電力がストップすると、 ロボットは抱えていた人または物を落としてしまう危険性があります。 機構的に姿勢が維持できる場合においても、停止してしまうとロボットに抱えられていた人は身動きがとれず、 外部に連絡さえ出来ない状態に陥ることも考えられます。

したがって、上記のように緊急停止では不都合がおこる機械には、 多少性能が劣化しても継続して動きつづけるようなシステムの適用が今後は必要になります。 そのようなシステムを構築するため、本研究室では等価伝達関数(以下ETF)を用いたリライアブル制御手法を提案しています。

研究概要

本研究は、機械そのものに新たな部品を追加させるのではなく、 機械を動かす制御アルゴリズム(ロボットの頭脳にあたるもの)を変更させることで、故障後も安全に動かせるようにします。

研究対象は、多重フィードバックループ系(センサをたくさん持つ機械)のセンサ故障です。 図1のようなn個のフィードバックループ(センサ)を持つ制御系に対して、ETF Gn-1は下式で与えられます。



本研究は、機械そのものに新たな部品を追加させるのではなく、 機械を動かす制御アルゴリズム(ロボットの頭脳にあたるもの)を変更させることで、故障後も安全に動かせるようにします。

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2リンクマニピュレータの電流センサ故障にETFを適用した場合の実験結果です。 正常時に比べ、故障時はマニピュレータの腕が振動していることが分かります。 故障時にETFを使用すると、正常時と同じように滑らかな動きで指定した位置まで腕を振り上げることができています。


詳細情報

  • 石川薫,中村太郎,大隅久,位置サーボ系における電流フィードバックループ欠損時の等価伝達関数を用いたリライアブル制御,計測自動制御学会産業論文集Vol.8, No.2, 9-16, 2009.
  • Kaoru Ishikawa, Taro Nakamura, Hisashi Osumi,Reliable Control Using Equivalent Transfer Function for Position Servo System in Current Loop Failure,The 34th Annual Conference of the IEEE Industrial Electronics Society (IECON2008), TT-1,pp.333-337, 2008.
  • Kaoru Ishikawa, Taro Nakamura, Hisashi Osumi,Reliable Control During Current Loop Failure Using ETF for Position Servo System including Disturbance Observer,The 2009 IEEE International Conference on Robotics and Automation (ICRA2009), FrC8.4, 2009.